《Epilogue》


船はあと数十分でキナギに来る。ロルがその船に乗り次第、その場でホウエン警察補佐隊は流れ解散にすると の事だった。
しばらくシィラとメリーの功績を讃える話で持ちきりだったが、一時間もしないうちに故郷を懐かしんでいた。
あんまり英気を養 うのは好きじゃないからそれでよかった。

こじんまりとしたテントの中でシィラ座り込み、チャック式の窓から摩天楼の方角をじっと眺めてい る。
あの竜は結局眠るのか、竜ポケモンなのに空を飛ぶ事を赦されないのか不思議な思いでいっぱいだった。
後ろでテントの布がめくられ、そ こに金髪の女性がひょっこりと現れる。

「ここにいたのね」
「はい、レックウザの事がずっと気になってて」

顔 を合わせた時、メリーが息を呑んだ。

「泣いてるの?」
「あ、これはその、兄さんの事で…」
「まさか、見つか らなかったの」
「街の人は、海に落ちたのかもって…でも、ここから西は流れが速くてっ…」
「…そう、ごめんなさい。余計な事聞い て」

少し2人は黙り込んだ。そして次にシィラが口を割った。

「あの鉄塔、どうなるんですか?」
「そう ね、入り口は私が壊したけど。もう一度直して誰も入れないようにしておくわ。
レックウザの力、あれは無闇に触れるものじゃない。ありあまる 力は人を寄せ付けるけど、堕とす力もあるから」
「そう…ですか。あのメリーさん」
「何?」

かすれた声にメリーは もう一歩歩み寄った。口元の声を聞き漏らさないように彼女は努力した。

「初めて出会った時のメリーさんの言葉、今でも覚えてますよ」
「え?」
「私の選んだ道は間違ってなかった。ヒンバスとの修行は辛いこともあったけど。
でも諦めてたらきっと今後悔してた」

シィ ラは一度涙を拭い、もう一度正座してメリーの真ん前に座る。

「本当に有難うございました」
「あら、そんなに畏まらなくて も…でも嬉しいわ」

少し頬を赤らめてメリーは目を逸らす。突然遥か窓の向こうから低い汽笛が鳴り出す。
テントの外でイスケが――  シィラちゃん!船が来たよ! と叫んでいる。

「大丈夫よ、貴方は私が羨む位強くなった。この先どんな困難があっても越えられるわ。 私が保証する」

そう言ってテントから外へ出ようと腰をあげた。

「メリーさん、私達また会えますよね」

そ の問いには疑問の感情があまりなかった。テントの前でメリーはにこりと笑う。


「いつでも会えるわよ」
「…は い!」


シィラも答えた。人生最高の笑顔だった。







 Fin


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