Episode0 「始まりの氷空(そら)」



かつて、神々が作ったといわれるシンオウ地方。今でも数多くの伝承が残っており、神々が愛でる地とも言われている。
そんな地方のとある田舎町。マサゴタウンと呼ばれる町のすぐ近くの田舎道にて、一つのバトルが始まろうとしていた。


「いっくぞビビっち、頑張ってくれよ!」
シンオウ地方は比較的寒い気候であるにも関わらず元気に短パンと野球帽を着こなす少年は、やはり元気よくボールからビッパを繰り出した。
ビッパは少し眠そうにしているが、すぐに戦闘態勢を整え相手を睨みつける。……頭の毛が若干跳ね気味なのは、あえて両者突っ込まないようにしているが。

対するは黒い髪を短く揃えた、澄んだ青色の瞳を持つ少年だった。
こちらは寒さ対策をしっかりとしており、赤と黒のウインドブレイカーを羽織り、首には長めのマフラー。割とブカブカのズボンは、見ていて温かそうである。
彼はベルトからボールを取り出し、高々と放り投げ、中にいるポケモンを呼び出した。
「出番だぜ、リューン!」
中から飛び出てきたのは、赤い体にまだ小さいとはいえ、中々の鋭さをもつ牙と爪。その尻尾には常に炎が灯されているポケモン。
「ひ、ヒトカゲ!? 何でそんなポケモンを……」
短パン少年の驚きの言葉通り、それはヒトカゲであった。しかしそれは、本来シンオウ地方では捕獲することができない種族のはず。
そんな事などお構いなしに、リューンというヒトカゲは尻尾の炎をメラメラと燃やし、今にも襲いかかろうと機を窺っているようである。
「そんな細かい話はあとあと! 今は勝負を楽しもうぜ」
ニッコリと笑った相手に、短パン少年は思わず苦笑を返してしまう。
ただ確かに、今は勝負の真っ最中。細かい話は、あとでいくらでも聞くことはできる。

「じゃあ行くぜ。リューン、火の粉!」
「よーしビビっち、かわして体当たりだ!」

元気よく始まった、新人同士のバトル。単調的ながらも熱いバトルは、周囲の野生のポケモンも、足を止め魅入ってしまうほどであった……。




「……ぃ、そっ……ど…だ?」
「だ…だ、…つ……ぇ」
時を同じくして、マサゴタウンから遥か遠く離れた場所。シンオウ地方のどこかという以外全く分からない場所にて、二人の人間が、何かを話している。
建物の中なのか全体的に暗く、太陽の光も殆ど射していない。さらには相当小声で話しているのか、はたまたただ単にマイクが壊れているだけか(いや、それはないって)、二人の会話はとても聞こえづらい。
しかし幾つかの単語らしきものは聞こえてくるらしく、その中で最も多かったのが……。

「……ェイミ」




(ふわぁぁぁ……よく寝たです……)
その頃、シンオウ地方で最も美しいという噂もチラホラ立つ花の町、ソノオタウンの花畑にて、“ソレ”は目を覚ました。
その姿はとても小さく、背中にある植物のお陰で、どこにいるのか全く分からない。しかし時折ガサゴソと動くことで、“ソレ”の存在が分かる…。其れほどまでに、“ソレ”は周りに溶け込んでいた。

“ソレ”はサッと周りを確認したあと、ゆっくりかつ迅速に、その場を後にした。
……ある、大事なものを残したまま……。






……全く関係がないこれらの出来事。しかし、これらはやがてリンクし、一つの物語を紡ぎだす。
え、何? 在り来たり過ぎやしないかって? まぁいいじゃん、人間だもの。(いや意味分かんないし)


とにもかくにも、物語は、幕をあげるのであった……。


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