Episode15 「森の朝にて」


チュンチュンと鳴くムックルの鳴き声が、森に差し込む光と共に朝の訪れを告げる。暖かな朝日はシェイミの体を優しく温め、彼女の目覚めを手助けしてくれた。
シェイミは大きく欠伸を一つ、ついでに体もぐぃぃ〜っと伸ばして眠気を覚ました後、辺りの様子を探ってみる。
流石に皆深夜遅くまで起きていたので、まだグッスリと眠っている。レントやスイクンはとても寝相が良いが、リルアは初期位置から大きく外れ、何故か穴の中に頭を突っ込んだ状態であった。
ドクロッグは既に起床しており、相変わらず何を考えているのかニタニタ顔で遠くから観察していたが、ふとシェイミはあることに気がついた。


(ここからはポケモンが喋る場面がありますが、人間には聞こえてはいませんのでご注意下さい)


『……あれ、リューンさんがいない……?』

そう、昨日何故か焚き火代わりにされていたヒトカゲ、リューンの姿がないのである。
既に起きているのかどこを見ても尻尾の炎すら見あたらない。折角会えたのだから話をしたいと思っていたシェイミはガッカリと肩を落とした。

『ドクロッグさん、リューンさんがどこに行ったかか知りませんか?』
『キシシシ……』

ドクロッグもどうやら知らない……というか教えるつもりがないのだろう、笑うばかり。
ひょっとしたら出発して間もないのではないかと彼女は少し探索しようとすると、後ろからガサガサという音が。振り向くとちょうど茂みからリューンが出てきた所であった。

『あ、リューンさん。どこに行ってたんですか?』
『……別に。そろそろ主人の所に帰ろうとしてただけだよ』

少し低めのアルトボイスといったリューンの声。相変わらず不機嫌そうであるが、リューンにとってはこれが普通の状態なのだ。
シェイミもそれを知ってか知らずか、ちょっと苦笑いを浮かべた。

『あの、皆さんに挨拶しないんですか?』
『別にする義理ないし、言葉通じないし、無理矢理引っ張ってきて焚き火代わりにする奴に優しくする程甘くない』
『え、えっと……あ、待って下さい!』

リューンの毒舌ぶりに思わず戸惑うシェイミ。そのままリューンはその場から離れ、シェイミもその後を追う。
その様子をドクロッグは黙ってみていたが、結局何もしない。後に黙っていたことをレントに怒られることになるのだが、そうなってもやっぱり笑うだけだったのは、また別の話。



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その頃シュン君はというと……?


「りゅぅぅぅぅん……どこ……に……いる……のぉ……?」

等身大の木の枝に縋り付き、もう何時倒れてもおかしくない状況。おいおいまさか一晩中探していたのかいシュン君? いくら何でもそれは体に毒ですよ?
イーブイ君も流石に心配そうにしてるけど、やっぱり頭から降りる気配は全くなし。……流石に降りたげようよイーブイ君……。
ちなみにこのイーブイ君、未だボールで捕獲されていません。つまり野生です。野生なのに何故シュンについて来るのかは……分からないんですが。
そんな二人を後ろから狙うのは、ウサギのような外見の野生のミミロル。何時襲おうかと機を伺っているようで、ソワソワと落ちつきがない。

やがて大きく開けた場所に出ると、シュンは疲れからかそのまま仰向けでバッタリと倒れてしまう。無論頭の上のイーブイは宙に投げ出され茂みの中へとダイブしてしまった形となってしまう事に。
そんなチャンスを見逃すことはなく、ミミロルはピョンピョンとシュンに近づき、何か持っていないかと色々と物色し始めた。

旅をしてると時折あるのは、野生のポケモンに色々と持ち逃げされること。眠ってたり気絶していたりすると、こういったポケモンが群がって現れ興味本位で持って行くというのがとても多いのだ。
ただ何故か通貨とかを持って行かれる事が多く、何故野生のポケモンが使いもしない通貨を持って行くのか? これは昔から謎である。恐らく今後も分かる事は多分ないのであろう。


『……ん〜、何かあんまり持ってないなぁ……』

ブツクサ言いつつミミロルは何か使える物は無いかと色々と見ているが、そこへイーブイが茂みからようやっと出てきた。
それに気づいたミミロルはビクッとして戦闘体勢を取る。イーブイが小さく唸ると、ミミロルはそのまま逃げるように茂みに隠れるのであった。

『……ふぅ、何でトレーナーでもない人守らなくちゃいけないんだよ……まぁ勝手についてきちゃってるから文句言えないけど』

全くもってその通りですイーブイ君。
ふとイーブイが周りを見ると、目の前には随分とコケが生えている大きな石がある。一見するとなんてことはない普通の岩であるが、とても神秘的な雰囲気が何となく出ているような気もしないでもない。
するとやっと目が覚めたのか、シュンがモゾモゾと動いた。どうやら目が覚めたようである。

「ふわぁ……あぁゴメンイーブイ、眠っちゃってたよ……」

イーブイはため息を一つつくと、小さく『ブィィ』と鳴いて答えるのであった。





『……何時までついて来るつもり? あの人間達と一緒の方がいいんじゃないの?』
『で、でもぉ……』
『……はぁ、勝手にしなよ』

一方リューンとシェイミは道無き道をかき分けシュン達を探している所であった。果たして無事合流出来るのか……?





「シェイミちゃぁぁぁぁん!! いたら返事してぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「何で起こしてくれなかったんだよドクロッグぅ!」
(とにかくまだ遠くには行っていないはずだ! 急いで探すぞ!!)
『キシシシ……』

そしてリルア達はようやくシェイミがいなくなってることに気づいててんやわんやの大騒ぎになっていたそうな。



〜to be continued〜


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