Episode13 「真夜中の森で火の玉程、いきなり会ったら怖いものなし」



「……成る程、いきなり現れて一言二言言った後、急に襲ってきたと……そう言う訳ね」
「はい。スイクンは、昔襲われた事があるって言ってましたけど……」

現在リルアとレンは、例の穴がある大木の前にて焚き火に対になるように身を寄せつつ情報交換をしているところであった。
リルアの膝にはシェイミがおり、八割ほど夢の中なのだろう寝ぼけ眼で話を聞いていると言った状況だ。
対するレンの方には、少し離れた場所でスイクンが何も言うことなく悠然と伏せているだけであった。脚の怪我も傷薬や怪我に効く木の実を摂取したおかげで、おおかた良くなっている。リルアが言うには明日にでも全快するだろうとのことだ。
そしてドクロッグは、何故か穴に入ってキシシシと笑いながら居座っていた。レン曰く、狭くて暗い場所が好きな奴、とのこと。ネクラか、とリルアが突っ込んだのは、また別の話。

実は“もう一匹”いるのだがそれはまぁ後にするとして、とりあえず話を進めよう。リルアはシェイミと一緒に行動していると言うことを、そしてレンはその シェイミのものであろうペンダントを所有していることを話す。ペンダントの時点でシェイミの眼は一気に覚めたことは言うまでもない。

(持っているんですか!?)
「うわたた、火、火に入っちゃうって!」

何も見えていないのだろう、危うく焚き火に突っ込みそうになったシェイミを辛うじてリルアが押さえる。
後一歩遅かったら大惨事になっていた所なのに、当の本人はジタバタと暴れてなおもレンに突進しよういう勢いである。

(返して、返してぇ!!)
「だから火、焚き火に入っちゃうって!)
「あの、僕は持って無くてスイクンが……?」

そうレンがいう間もなく、スイクンは毅然とした表情でシェイミに歩み寄っていた。
思わず体を強張らせるシェイミであったが、スイクンは懐からペンダントを取り出し、それを彼女の目の前に出した。

(……あ、えと)
(こちらの私欲の為に、先日は酷い事をして済まなかった。心から、詫びさせてもらう)

そう言い、深々と頭を下げた。レンも少しオドオドとした後、すぐに頭を下げる。
思わずキョトンとした表情になるシェイミであったが、ゆっくり首を振った。

(あの、リルアさんが言ってました、何か大変な理由があるって。許すのはまだちょっと出来ないかもだけど……でも、仲良くして下さい)

ニコッと笑う彼女に、スイクンは強張らせてた顔を少しだけ綻ばす。レンもレンでえへへと顔をにやつかせるのであった。



『……カーゲゲ、カゲ、カゲカゲ』

不意に焚き火近くから、不満を漏らすような声が。焚き火に燃えてる尻尾無理矢理突っ込まれ、正しく憎々しいという言葉がお似合いの顔をしたヒトカゲ……リューンがいた。

(何時までこうしてればいいんだ、あぁ? っと、言っているです……)
「あぁゴメン、すっかり忘れてた」
『…カゲ……』

そう愚痴るように鳴くと、リューンは尻尾を焚き火から取り出し、そそくさと木の裏側へと行ってしまう。最も尻尾の炎があるので、裏側からチラチラ火が見え隠れするのだが、あえてそこは問わない事にしよう。

「……さっきから聞きたかったんですけど、あのヒトカゲは一体……?」
「あぁ〜前の追いかけっこの後シェイミちゃん助けてくれたトレーナーの手持ちらしいよ? 何でここにいるかはよくわかんないけど……」


レンの質問に、リルアも少々言葉を濁す。
だがここにリューンがいると言うことは……?



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「おぉぉい、リュゥゥゥン。どこにいるんだよぉぉぉぉ……」


月明かりの中、イーブイを頭に乗っけたシュンがボロボロの状態で彷徨っていた。……やはり迷っていたか。
イーブイは我関せずと言った表情でスゥスゥと眠っている。……というか、結局連れて来ることになっちゃったのねシュン君……ご愁傷様です。

「ふえぇぇぇぇ……リュゥゥゥゥゥン、お願い出てきてぇぇぇぇぇ……」

シュン君は情けない声でリューンを呼びつつ、あっちへフラフラこっちへフラフラ……果たして無事再会出来るのやら……?



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「……さて、そろそろいいかしら?」

リルアがそう言うと同時であった。急に辺りの空気がピィンっと張り詰めた。思わぬ事にレンとシェイミは背中をピンッと伸ばしてしまう。
スイクンとリューン(は木の後ろにいるため詳しくは分からないが)はこれといった行動を示さなかったが、恐らく感じていることは同じなのだろう。


……リルアの尋問が、始まろうとしていた。




〜to be continued〜


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